超低温における量子流体・固体
量子多体現象を研究する上で,液体および固体 He(量子流体・固体)は以下のように理想的な特徴を備えています。
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実験室で扱うことのできる最も高純度の試料を得ることができる(スーパークリーン物質)
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2. |
He 原子は構成粒子として非常に単純で(低温では剛体球とみなせる),2原子間相互作用も精密に知られている(レナルド-ジョーンズ型)。さらに,電子系のように結晶格子という入れ物に閉じ込めなくても,それ自身で液体や固体などの凝縮体を構成する。
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3. |
原子間相互作用は同じだが,異なる量子統計に従う 3He(フェルミ粒子)と 4He(ボース粒子)という安定同位元素が存在する。また,両者の一様な混合液体も安定して存在する。 |
量子流体・固体は,第1原理計算と実験との精密な比較が可能であるという稀有な凝縮系です。例えば,液体 4He のラムダ(超流動)転移や固体 3He の交換相互作用などが経路積分モンテカルロ計算で定量的に再現できることなどが知られています。
しかし,こうした構造の単純さとは裏腹に,液体および固体 He が超/極低温度域で示す量子現象の多様さには驚くべきものがあり,まさに多体効果あるいは協力現象の妙というべきです。また,量子流体・固体に限らず,系の量子力学的な基底状態を詳細に調べる上で,熱攪乱のない超低温度域は最良の環境と言えます(超低温の生成方法についてはこちら)。
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